そして、熱いキスを求めてきた。
タクシーの運転手の視線が気になる。
重倉は気にならないのだろうか。
肩の手が次第に下りていく。声を出すことはできない。
されるがまま、されていた。
住宅街へ入り、重倉が先にタクシーを降りた。
タクシーを降りると、何事もなかったかのように
平然と振り返りもせずに歩いていく。
奥さんが待っている家へと。
―これくらいの距離がちょうどいい
そう、「これくらいの距離がちょうどいい」
ほんの2、3時間前に思ったことだ。
何がちょうどいいというのだろうか?
結局は、自分が傷つかないように、
そう思い込もうとしているだけではないか。
バックミラー越しのタクシー運転手の冷たい視線を感じる。
初めてカラダを売ったとき、ルームサービスを
持ってきたホテルマンの視線を思い出した。
結局、また同じだ。
粕谷も水谷も、重倉も。
恋も愛もない。
上辺だけの会話とそれを隠すための食事、そしてカラダ。
私は何も学んでいない。
私は一歩も進んでいない。


